1991年10月16日

今年の夏に日本に一時帰国の日のことだった。

コロナの影響で空港から旅立つ人なんか殆どいなくてガラガラのブリュッセルのザヴェンテン空港でのチェックインカウンターでの出来事。

男性の係員にパスポートを渡す。

チェックインカウンターで人が感じよかったことなど数える程しかないので、今回も適当にパスポートを渡して、適当にチェックインを済ませようとしていた。

白人男性で、そのアクセントからすぐにフラマン人だと分かった。

事務的に進んで黙って事が終わるのを待つ。いつものように。

 

全て事なきを得て、さて、いざパスポートをアクリル板越しに返されるときに

「僕も同じ日に生まれました」と声がする。

ええ、と思い大してしっかり見ていなかった相手の顔を見ると、なんだかいたずらっぽく、可笑しくてたまらないという顔をしている。

「まさか、1991年生まれではないですよね?」

「いや、完全に同じ生年月日。」

ええーー、うそー!同じ生年月日の人なんか初めて会ったー!と、さっきまでの空気なんて何処にいったのか、一瞬ではしゃいでしまった。

「29歳、もうそろそろ年齢を感じるよね」

なんて、年相応?の会話をしながら。

「今年の誕生日にはあなたのことを思い出しますね」

「私もあなたのことを思いますね」

そんな風にして、なんだか凄い一瞬が過ぎ去った。

 

何故か今日そのことを思い出す。

私は東京で生まれて、あの人は(多分)ベルギーのどこかで生まれた。

性別も国籍も何もかも違うけれど、内側に抱えている世界は似ているのかしら、と思う。

冗談を言わずにはいられないところとか、誰とでもお友達になってしまうところとか。

違うところもいっぱいあるだろうけど(性別とか国籍とか)、きっと似たようなところもあるんだろう。

そして、そんなことは生年月日が同じだとそう思いやすいってだけで、本当は誰とでも共通してあるものなのかもしれない。

ああ、こういうところ一緒だな、と。

 

最近は久しぶりで自分の作品を作っているので、なんだかそういったことに敏感になる。外に出ると、紅葉が美しいことも。紅葉した葉っぱ一枚一枚の間の木漏れ日が、この季節は特に美しいことも。全て繋がって、本当に綺麗だなと思う。

 

なんでこんなことを思うかっていうとね、

もう性格ツワモノみたいな人たちに囲まれて作品を作るのは

ほんとーにほんとーに大変!って日々を送ってるからなのです。

でも、大変!って思いながらも、喉元過ぎればなんちゃら、学びの多い日々に感謝しています。