先日の土曜日に大学の演劇映像コースの同窓会があった。
卒業以来、会ってない人たちが大半だったけれども、あまりみんな変わっていなくて嬉しかった。
そして、この同窓会を企画してくれた人が、教授陣にも声を掛けようということで各方面働きかけてくれたようで、なんと三人も来てくださった。
学生時代は、少し恐れ多かった先生たちと、こうやって和気あいあいと話せるようになる日がくるなんて。大人になるって、良いこともある。
そうやって怖く思っていた先生の中でも、特に一番恐れていた藤井仁子先生と話しことが印象的だ。
彼は、映画監督の濱口竜介を活動初期から大変評価している。
私は、濱口監督の『寝ても覚めても』で、とんでもなく感動したので、藤井先生の鋭い映画感覚で、先生自身がどのように濱口監督を評価しているかを知りたかったのだ。
話は濱口竜介から小津安二郎、相米慎二まで広がっていった。
そこで、相米慎二の『お引越し』の話をされたので、昨日の夜に観てみることに。
「日本語での演技において、大きくはっきりとお腹から出るような声を出すだけで、何かが起こる」という藤井先生の言葉。
映画を観てみて、そこで確かに起こっていることに、半ば愕然とする。
そして、しばらく時間が経つと絶望的な気持ちになったりする。
こういう凄い演技って、一生出来ないかもしれない。
それって、大げさでなく、結構絶望的な思いなのだ。ただただ、上手くなりたい、とそれだけを思って必死にやってきた身からすると。
しかし、もうこうやって文章を書いていると、別の自分がひょいと現れる。
そして、しっかり聞こえるように大声でこう言ってくるような気がする。
それでもお前は絶望からいつも学んできたではないか。
気が遠くなるような思いがあって、カラカラになったところから、いろんなことを吸収してきたのではないか、と。
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こうやって、演劇や映画の話が出来る仲間や恩師がいることは本当にありがたい。
これからも、こういった交流があるといい。そういう人たちと大学時代に出会えたことは、既にして人生の宝ではないだろうか。
そうそう、こうは言いましたが、
相米慎二の『お引越し』は素晴らしかったので是非観てください。
勿論、濱口竜介の『寝ても覚めても』も。