関係の話。

先週に引き続き、Pauline Bourseとのスタージュ2週目。

今週は、先週のテーブルワークを踏まえて、3組に分かれていくつかのシーンを稽古した。

各グループに演出とドラマトゥルクがいて、基本的に指示を出すのは、演出であってPaulineは稽古中は一切口を出さない。

ひとつのグループの稽古を他の人たちも一緒にみて、終わった後にそれぞれ意見を交換しあう。普段は、舞台に目が行きがちだけど、今回のスタージュの目的はむしろ演出とドラマトゥルギー、そして最終的に舞台に乗るものの関係に注目することにあるので、今回のみんなのディスカッションはいつもと違っていて、なかなかに面白い。

 

演出と俳優との距離は絶対に必要だ。だけれども、その距離は決して冷たさであってはならず、むしろ両者の間には強い信頼関係がなくてはならない。おそらく、この関係は俳優間のそれよりずっと難しいものなのではないだろうか。演出家は、その存在の歴史こそ浅いものの、グループの指揮をとったり、最終的な決断をとったりするという点でやはりどうしてもみんなのリーダーになってしまう。自ずとそこにはヒエラルキーが生まれてきてしまい、それはやり方によっては簡単にこの関係を悪い方向へと向かわせられる、そんな危険な関係、或いは場所だと思う。

きっと、だからこそ俳優が演出家に質問を投げかけるという構図が必要なのだろうと思った。一方的な関係はなし。常にそこには絶えることのない流れが必要なのだ。イメージとしては、回転寿司のイメージ?そして、その流れてくるお寿司たちで冷たいのはなし!人の手によって握られた、人のぬくもりのある、そして、ぎゅっとしていない、空気の入ったふんわりしたシャリが必要。そういうシャリは、きっと口の中でほどけやすくて、美味しいはず。そういう関係は、きっといい稽古場を作り出し、いい作品へと向かわせる布石になるはず。

 

さて、俳優として参加した私にとって、このスタージュはひとつの進歩を感じた大変満足したものだった。

暴力的であることと、相手の話を聞くこと、は両立しうる。

相手に集中していれば、どんなに表面上ヒートアップしていても、どこかには必ず落ち着いた自分がいて、その自分は相手をしっかりと見て、聞いている。

たぶん、これが集中している状態なんではないかな、と思う。

小さな、短い間だったけど、体験できてよかった。

 

終わった後に、演出の子とお互いいかように満足したかを説明しあう、そして感謝を述べあって、とても嬉しい。誇らしい。

 

今回、Paulineが言っていた「自分たちができることに自覚をもって、自信を持つことも俳優にとって非常に重要」というのを、私は随分真摯に受け止められるようになった気がする。ずっと、へりくだることに価値を置いてきたけど、これは本当にあんまり役に立たないなって。自分の今できることを把握すれば、足りていないものを正しく判断して、正しく自分に求めることができる。それに、それは周囲に対する誠実な在り方である気もする。

 

なにはともあれ、毎回新たな演出家・俳優が来るたびに言って帰ること

「あなたたちは最高のチーム」

が今回も聞けたので、嬉しかった!

 

明日は休みなので、出しすぎたエネルギーを取り戻しつつ、今週の日曜日にみた濱口竜介監督のハッピー・アワーについて書く予定。