夏に見た、俳優の、演劇をする人間としての道は、果てしなく長かったことを忘れていた。
忘れていた。
長すぎて、怖くてみないようにしていた。
そんなことを気付かないほどに、見ていなかった。
だってあまりにも長かったのだ。
そして、それがこれからもさらに延長していくことしかないこともわかる。
だから、見ないことに、無意識のうちにしていたのだ。
でも、それは、だめだった。
そういう生き方をしないと決めたのだ。いや、決めたのではない。
そうなってしまったのだ。
戦うことを、決めたのではなく、
戦うことを、与えられた。
わたしが演劇を選んだのでなく、
演劇がわたしを選んだ。
俳優の生は、90パーセントの苦しみと10パーセントの喜びでできている。
でも、その10パーセントは、90を超える。理屈でないのだ。
舞台にたったときに、体がびりびりシビれることとか、涙があふれることとか、笑いがやってくることとか、世界が輝いてみえることとか。
そういうことを感じる力を与えられたから、だから与えられた道も長い。
見えたものを、感じたものを放り出すような生き方はしない。
それは、わたしの決めたことだから、責任持ってそうしよう。