二度目のクラウンスタージュ

春は苦手だ。世界は開いていくのに、体がまだ冬にいたいのか、開きたがらない。 今年のブリュッセルの春は、多くの時間は雨か灰色の空だ。それは確かに冬と変わらない色だけれど、少しだけ高いところにある。やはり春なのだ。だから、たまに晴れたりもする。…

これは一体。オランダ。

オランダで俳優として参加している『Superposition』のプレミアが9日にあけた。 この国の演劇業界では、批評文化がかなりしっかり根付いているらしく、時にこき下ろすことも厭わない程らしいが、この作品はかなり高い評価を貰っている。この8週間、みんな本…

これはピュリファイ。

ここ一か月程真夜中12時を過ぎても明るい夜を過ごしているのは、極北の国アイスランドにいるから。 この夏は、普段は離れて暮らしている恋人の住む国に滞在してる。此処を訪れるのはこれで7回目になるのだけれど、今回ほどにこの土地に流れる美しい空気と澄…

まだまだ治らない

ブリュッセルに快晴の日々が続いている。驚きだ。 最近は、オランダ語を学び始めた。新しい言語を学ぶのは、最初の方は頭がくらくらするような時間が続くのだけど、少し慣れると、なんて面白いんだろう、という感覚に変わってくる。 特にブリュッセルは、常…

俳優の演技の誠実さについて

大分昔に、大きな声ではっきりとおなかから声を出すと日本語の演技では何かが起こる、ということを大学でお世話になっていた先生に言われた、ということを書いたのだけど、 先日、演出作品の稽古中に俳優たちを見ていたら思ったことがあった。 俳優の声がお…

tu vas y arriver(あなたは、そうするわ)

演出作品 À l'Ouestの公演が3月11日に終わった。 どう語れば、どこから語ればいいか分からない、そんなクリエーション期間だった。 この作品の最終的な形だけを話すと、この時間について、この経験について、何も語れない。 つまり、作品としては「結果よけ…

À l'ouestが始まる。

学校も卒業して、ようやくベルギーでのプロとしての演劇活動が始まった。 来年の3月にベルギーの二つの公立劇場から依頼され、ジュディット・シズレ(Judith Ciselet)という同世代のベルギー人女性劇作家の作品を演出する。 10月終わりにようやくメンバー全…

「私」と「他者」の交差するところ/しないところ

時間が少し経ってしまいましたが、8月25日・26日に早稲田大学どらま館にてワークショップを開催させてもらいました。タイトルは「演出ってなんだったっけ?ー聴くこととと語ることを通して演出を再考する」。 演出家向けのワークショップというのは、実は、…

ある森(Una Foresta)から始まる。

長いはずの夏が、既に終わってしまったような気がする。 去年の夏に、ヴェネティアビエンナーレ演劇部門35歳以下の若手イタリア人演出家向けのコンペティションで優勝して(詳細はコチラ→ヴェネチアビエンナーレ2021→ヴェネチアビエンナーレ2022 - KONDO MIZ…

卒業制作終了。

卒業制作が先週終わった。 INSASの演出科の学生の4年を締めくくる作品である。 沢山を注いでしまったので、今の私は空っぽである。 人一倍孤独を好むのに、心の中の空虚に耐えられず、無音をかき消すかの如く、友人たちに次から次へと連絡してお茶をするかワ…

演劇が楽しい。

あけましておめでとうございます。 ブログを更新しなくなって、大分時間が経ってしまった。 書かない間に、ヴェネチア稽古が始まったり、自分の卒業制作の稽古が始まったり。 演劇は、一応長くはやっているけれど、こんなに楽しいと思ったことはないかもしれ…

弱いほうの声をきく

聴かれない声というのはある。 G.Cスピヴァグによって知的に冷静にそして切実に書かれた「サバルタンは語ることができるか」は、21歳に読んだあの時から今まで、かれこれ10年近く私にこの「声」という根本的なテーマを与えつづけてくれた。大学四年生の時に…

最近やめたこと

最近はインターンでとあるクリエイションの演出補佐をしています。 中にいつつも、やはりインターン生なので、外から見ている感じがあり、 ブリュッセルにおけるプロフェッショナルな作品作りはこう行われるのか、と日々日々頭の中で思いを巡らせて舞台を眺…

ヴェネチアビエンナーレ2021→ヴェネチアビエンナーレ2022

物事が重大すぎて何が起こっているか把握できない様、を表す四字熟語はないものかなと先ほどからパソコンを覗いています。そういうことを上手く言おうとしてるけど、なかなか言えない。最近は未熟さばかりを感じます。 何が言いたいかというと、 先日の記事…

ヴェネチアビエンナーレ2021

ヴェネチアビエンナーレに参加するために10日前に現地入りして稽古をする生活をしています。 35歳以下のイタリア人の若手演出家のコンペティション部門に出品する作品に俳優として参加します。 昨日はたった90分の舞台稽古があって、今日17時から審査員の前…

年度末は6月。

欧州では、6月といえば年度末である。 年度末と言えば、卒業シーズンでもある。 日本で育った私にとって、こちらにきて最初の数年は、一年の中での何かの終わりと始まりであった3月4月に何も起こらないこと、それがただの春に過ぎないことに寂しさを感じてい…

「君には覚悟があるのか?」

「せっちゃんが あたしをきらってたの知ってたけど あたしは せっちゃんのこと きらいじゃないわ」 岩館真理子の『まるでシャボン』より 演劇を私が芸術だと見なす理由は、そのポエジー(詩情)にある。 その柔和さにある。 その美しさにある。 ただ、そのよ…

4月よ、君はどこに行っていた

すごい動いた4月の頭。一気にプロジェクトがふたつ。 すごい動かなかった4月の真ん中。鬱々して、本と漫画と映画三昧だった。(雪降ってたし) いま、すごい動いている私の中。 そして、すごい動いて欲しいこれから。 波がある。波があるのがふつうなのよ、…

演じたい。

今週から俳優科の四年生の卒業公演クリエーションが始まった。 私たち演出科の三年生は作品のテクニック面を担当する。私はなんと照明担当。 昨日は稽古スペースの基本的な照明を吊ったりしていました。 まさか自分がこんなこと出来るようになるとは思ってい…

友が逝く。

友人を亡くした。 中高時代の友人だった。 彼女は研究者だったので、お互い勉強を続けている者同士として、高校を卒業後も定期的に連絡を取り合っていた。 苦しい日々を互いに激励しあった数年だった。 そう言ってしまえば美しいが、本当のところは私が彼女…

あけましたが、まだロックダウン。

ベルギーの冬は気が滅入る。 寒くて、雨が降っているか、分厚い雲に空が覆われているかのどちらかで、日光不足になるのだ。だから、毎年何だか鬱々とするな…と思うと、人々はビタミンDを摂取し始める。 かくいう私も、たった今、去年買ったサプリメントの残…

Carte blanche 不満足までの軌跡。

10月から稽古を重ねてきた自分の演出プロジェクト・Carte Blanche(カルトブランシュ白紙)プロジェクトが12月1日に公演を終了しました。 Carte Blancheプロジェクトとというのは、通常のセミナー(授業)と異なり、生徒主体となって企画から作品立ち上げまで…

1991年10月16日

今年の夏に日本に一時帰国の日のことだった。 コロナの影響で空港から旅立つ人なんか殆どいなくてガラガラのブリュッセルのザヴェンテン空港でのチェックインカウンターでの出来事。 男性の係員にパスポートを渡す。 チェックインカウンターで人が感じよかっ…

元に戻った。

さて、前回のブログでは大迷子になっていましたが あれから数日、文字通り頭を抱えて悩んだ末に(人間って本当に頭を抱えるんだね)、 日本の親友に「ミズキは魔女の宅急便見直すといいよ!」と言われ、 もう何度目?という魔女の宅急便にポロポロと涙を流し…

迷子の中の迷子。

スランプって経験したことありますか? 私は、いまこの瞬間、大大大スランプに陥っています。 三週間前からクリエーションを始めて、 ここにきてどうやって作品を作ればいいか分からなくなってしまった。 右も左も上も下も前も後ろも、全方位の斜めも。どこ…

演出って面白いんだね。

演出という作業が、 内観を外側から見るものだと感じた今日。 INSASに入って、一番響く言葉を先日私の稽古をみた先生に言ってもらった。 演技が面白いと思ってきたのは、 役という普段の自分から少しずれているように見える自分が外界と接したときに色々感じ…

稽古が始まったよ。

ベルギーのコロナ禍で、生活は日々変わっていくけれど、 そんな中でもCarte blanche(白紙)プロジェクトが始まった。 毎年、第三学年全体と最終学年である第四学年の俳優コースの生徒が一緒になって、生徒主体でゼロからプロジェクトをつくるのだ。 私は演出…

ヨガ。

私が数年前から通っているヨガの鈴木洋子先生は、すごい。 どうすごいのか。 彼女のいる場所は浄化されていき、その場にいる人は癒されていく。 彼女が手を当てるだけで、人の体は動くし、 見ただけで、相手の体のどこか滞っているのかが分かる。 洋子先生曰…

「人生変わるような舞台観たことないわけ?」

「人生変わるような舞台観たことないわけ?」 と大学の卒論担当教授に言われたのが忘れられない。 あの時は(今よりもっと)頑固だったし、自分の感情をうまく外に出せなかったので 「別にないですけど」 みたいに突っぱねて答えた。いや、実際にあの時はな…

裸を撮らないと。

INSAS第三学年目の第一週の授業は写真だった。 去年に引き続き(詳細はこちら→世界に対して、写真を撮るということ。 - KONDO MIZUKI'S BLOG)、めちゃくちゃ面白かった。 今回のテーマは、セルフポートレート。 Nikonのフィルムカメラで40枚分が課題だった…